■薬師寺金堂に安置されている。1951年指定。銅像、鍍金造である。中尊(薬師如来)の像高254.7cm、左脇侍(日光菩薩)は327.3cmで右脇侍(月光菩薩)は325.3cmで7世紀(白鳳時代)の作であるとされる。
■金堂の本尊として祀られる、丈六の薬師如来座像に、日光、月光の二菩薩立像を配した薬師三尊像である。
■粗衣まとい、宣字座上にゆったりと坐す中尊に対して、華やかな俗装の二菩薩がしなやかな身のこなしで侍立する。
■見事な三尊の構成であり、雄大にして品位ある造形は崇高美の極致を示すといっても過言ではない。衣紋も写実的な表現を意図しながら、巧みに装飾性が付与され、鍍金を欠いて黒光りする金属肌が、かえって尊厳を増しているようにすら見える。
■日光・月光像は両手の構え、腰の捻りを左右逆にしてほぼ対称的な姿で侍立する。均整のとれた充実した姿態は中尊のそれに近いが、下半身の動きに合わせて起伏する薄い衣を通して、衣下の弾力感のある肉身まで巧みに表されている。
◆薬師如来のまたの名を医王如来ともいい、医薬兼備の仏様です。人間にとって死という一番恐ろしいものを招くのが病気です。体が動かなくなるのも病気なら、身の不幸、心の病も病気です。欲が深くて、不正直で、疑い深くて、腹が立ち、不平不満の愚痴ばかり、これ皆病気です。応病与薬[おうびょうよやく]の法薬で、苦を抜き楽を与えて下さる抜苦与楽[ばっくよらく]の仏様。だから人々に仰がれ、親しまれ、頼られていらっしゃるのです。
…極楽は西にもあれば東にも/来た[きた](北)道さがせ/皆身[みなみ](南)にぞある…
◆西に阿弥陀様の極楽世界、東にお薬師様の浄瑠璃世界[じょうるりせかい]があります。けれども薬師如来は東方浄瑠璃世界だけが願うべき世界ではなく、西方極楽世界[さいほうごくらくせかい]へ往生したいと願う人には、薬師の名号を聞くことによって極楽世界へ導いてあげますよとおっしゃっています。その人その人にふさわしい浄土を願い引導して下さいます。
◆金堂内の白大理石須弥檀[しゅみだん]上に、中央に薬師瑠璃光如来、向かって右に日光菩薩[にっこうぼさつ]、向かって左に月光菩薩[がっこうぼさつ]がお祀りされています。薬師三尊のおわします内陣は長和4年(1015)に撰述された薬師寺縁起で「瑪瑙[めのう]を以て鬘石となし、瑠璃[るり]を以て地となし之を敷く、黄金を以て縄となし、道を堺し蘇芳[すおう]を以て高欄[こうらん]をつくり紫檀[したん]を以て内陣天井障子となす」とあり、まばゆいばかりの様相でした。まさに浄瑠璃浄土の世界です。