■右手は畏れを振り払う施無畏、左手は願いをかなえる与願印の薬師如来像で、光背には七仏薬師が描かれている。
■近世になって室生寺が真言宗寺院となるとともに尊名が釈迦如来に改められた。本体は顔から胸にかけて後世の厚い漆塗りが施されている以外に修補はない。桧の材で造られた光背や台座の蓮華も、当時の彩色のまま伝えられている。
■室生寺金堂に安置されている。木造、像高237.7cmで9世紀中頃の作とされる。
■本体は、肉身の弾力ある膨らみや薄い着衣の鋭く尖った襞など、柔らかい桧の材であれば表面の漆による塑形に頼るところを、硬い榧材を用いて、彫刻だけを表現している。
■両腕から側面へ、肩から背面へ広がる翻波式衣紋は、水波としても衣褶としても現実感のある形を作り、構成は華やかで変化に富む。
■その精妙に彫出された木地を被わないために、体部背面から木心部分を刳り抜いて干割れを抑え、材の幅を超える両腕などの継ぎ目は密着させている。
■このように専門化した技法による分業制作が行われ、技術の水準も高いところから、当時なお官営工房として大きな組織を維持していた東大寺造仏所で制作されたと推察される。